カンバーランド長老キリスト教会

めぐみ教会

東京都東大和市にあるプロテスタント長老派のキリスト教会です

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  • 2025年6月8日「風の音、三景」ヨエル書2章23節~3章2節

    本日はペンテコステ礼拝です。ペンテコステとは、ユダヤの三大祭りである五旬祭の日に、初代教会の人々に聖霊が降った出来事を記念する日です。使徒言行録2章はこの出来事を、「突然、激しい風が吹いてくるような音が天から起こった」と記しています。それは、教会の歩みが始まる、新しい風が吹いた瞬間でした。このペンテコステは、実はこの出来事の約600〜700年も前に、神様がイスラエルの民に与えておられた約束の成就でもありました。預言者ヨエルを通して神はその約束に至る歩みを示しておられて、ヨエル書にはその歩みが三つの景色で描かれています。本日はその三つの景色に目を向けながら、ヨエル書2章23節から3章2節を共に味わってまいりましょう。

    第一の景色は、「裁きの景色」です。ヨエル書2章25節には、ばったの大群がイスラエルを襲った歳月について記されています。群がるばった、若いばった、食い荒らすばった、かみ食らうばったが作物を食い尽くし、農業に壊滅的な被害をもたらしました。これは、イスラエルの人々が本当の神を忘れ、他のものを神として拝んでしまったことへの「裁き」でした。「裁き」と聞くと恐ろしい響きがありますが、神さまはもともと、私たちと契約を結ばなくても何の不自由もない完全なお方です。その神さまが、人に神と共に生きてほしいという一方的な愛から契約を差し出してくださいました。ところが人間は、その契約を守ることができず、生活の不安や苦しさの中で、神ではないものを頼るようになっていったのです。神さまはそんな人間に対して、警告せざるを得ませんでした。それが、この「裁きの景色」です。けれども神さまは、裁きだけで終わられる方ではありません。
     第二の景色は、「回復の景色」です。神さまは続けて、「わたしがあなたがたに送った大軍が食い荒らした歳月を、あなたがたに償おう」と語られます。ばったにすべてを奪われた苦しみの歳月に対して、豊かな食べ物と満ち足りた生活、そして神の名をほめたたえる喜びを与えてくださるのです。それは、ただの回復ではありません。「奇しき業」と呼ばれる、驚くべき恵みがそこにあるのです。神さまは、「神がここにおられる」ことを思い出してほしくて、そして「神を神とする」ことに立ち返ってほしくて、裁きを与えられました。それは人を突き放すためではなく、関係を回復するためのものだったのです。この「回復の景色」こそが、神の希望でした。

    そして第三の景色、それが「聖霊の注ぎの景色」です。神さまはヨエル書で「すべての肉なる者に、わたしの霊を注ぐ」と約束されました。これが、ペンテコステの日に成就した聖霊の降臨です。聖霊とは、神を思う心を与えてくださる「助け主」です。私たちが神を信じ、祈り、頼ることができるように、そっと助けてくださいます。神さまは、「裁きを行った私だけど、あなたを見捨てていないよ。聖霊を通して、あなたはいつでも私に語り掛けられるんだよ。これからも、私はいつもあなたと共にいるよ」と語っておられます。神さまは空のかなたから「がんばれよ」と声をかけるようなお方ではなく、今ここに、私たちの隣にいてくださるお方なのです。だから私たちは、自分の喜びも悲しみも、苦しみもすべてをこの神さまに打ち明けてよいのです。聖霊が注がれるということは、神さまがいつもそばにいてくださるという恵みの風景なのです。

    こうして「裁きの景色」「回復の景色」「聖霊の注ぎの景色」と三つの景色を見てきました。イスラエルの歴史に描かれたこれらの出来事は、一見、私たちとは無関係のようにも思えます。私たちは明確な契約や十戒の石板を手にしたこともなく、もともと異邦人として神を知らずに生きてきた者たちです。「神を神としないことは罪だ」と言われても、実感が湧かないのも当然かもしれません。けれども、神さまは今も変わらず、「私と共に生きよう」と呼びかけておられます。神の愛と恵みは今も私たちに注がれているのです。ペンテコステを通して与えられた「聖霊の注ぎ」は、この世界全体の救いに関わる大きな出来事であるのと同時に、私たちの半径数メートルの人生の中でも起こる出来事です。神様は、私たちの過去と未来を「償う」ために、今この瞬間も、聖霊の風を吹かせておられます。風の音が聞こえるまでに、神様が与えてくださった「裁きの景色」「回復の景色」「聖霊の注ぎの景色」…その一つひとつを思いながら、今日も共にいてくださる神さまと歩んでまいりましょう。(篠﨑千穂子)

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